※この記事はsakefan.net掲載記事(2018.08.02)の転載です

「初呑み切り」とは

ご存知の方もおられると思いますが、簡単にご説明します。「初呑み切り」とは冬から春にかけて仕込んでタンクで貯蔵していたお酒の熟成度合いを確認するために夏場に初めてタンクの吞み口を切って(開けて)評価のための試飲をする事です。
基本的には蔵内行事であり、一部審査官の先生や近しい酒販店の方も参加して行われていました。最近は蔵内での試飲の後に一般の方へも解放される蔵もあります。蔵イベントとして実施される蔵もありますが、今回参加させていただいた滋賀県の上原酒造さんはあくまでも評価のための試飲ということで、色々と事前説明をブログでしていただいて理解して参加をさせていただく形式でした。

上原酒造さんのご紹介(簡単ですが)

滋賀県高島市にある上原酒造さんは「不老泉」という銘柄で知られています。一度呑んだら忘れられない個性的なお酒だと思います。ですので、以降の説明はご存じない方向けという事で、ご存知の方は次の章へ。
高島市は滋賀県の湖西側、つまり琵琶湖の西側にあります。結構北まで行きます。JRの駅でいうと「新旭駅」が最寄り駅です。そこから琵琶湖に向かってGoogle Map曰く3.6km 行ったところにあります。「全量木槽天秤しぼり」で「酵母無添加の山廃仕込み」に特徴があります。しっかり熟成したお酒は、一般的な日本酒の香りや味とは一味違います。普段日本酒を飲まないバーボン好きの友人が「これなら飲む!」と言ったのが印象に残っています。基本的には酸がしっかりしていて木系の香りがすると思います。中々に香りと味の表現が難しいので興味がある方は呑んでみてください(苦笑)。

上原酒造への道のり

そもそも私と上原酒造との出会いは、実は結構古く、まだ関西に住んでいた1997年の夏に近江今津の酒屋で「奥琵琶湖」という銘柄を偶然購入したのが始まりなので21年になります(コシヒカリを使ったお酒です。詳しくはこちら)。しかし14年ほど関東へ行っていたこともあり、酒蔵へ伺ったことはありませんでした。
真夏日の7月21日の真昼間にコミュニティバスを待ちきれず、無謀にも歩き始めた私は途中ほとんど反対方向のうどん屋に寄って昼食をとり(とてもコシがあるさぬきうどんで絶品でした!)、結局1時間以上歩いて到着。でもおかげでちょっと面白いところを見つけました。一つのお社に2つの神社があり、鳥居は仲良く二つ並んでいます。詳しくは分かりませんが何だか面白いのでお参りしておきました。蔵までの道のりの間は集落と水田が交互にあったのですが、この水田の景色がなんとも素晴らしい!! 奥の山々が琵琶湖越しに見える景色がここならではで、とても美しく、暑さの中でふらふらになりながらも一人で感動していました(下の写真とかどうでしょう)。到着した時には既に帰る方もおられて、道に見送りに来られていた蔵の方に声をかけていただいて会場まで連れて行ってもらいました。「歩いてきたの~」と半ばあきれられてしまいましたが、熱意は伝わったはず??

評価のための試飲、きき酒

入ったところでお酒の一覧とアンケート用紙をいただき、いざ皆さんの流れの中へ。1番から順番にきいていきます。そう、きき酒なのです。呑んではいけません(くれぐれも飲まないようにブログでも注意されました)。なぜなら57種類もあるからです。これはちょいちょい呑んでいたらベロベロになってしまいます。今回はグッと堪えて、全種類飲みませんでした。57種類一気にきくというのは初めての経験でした。ひとつひとつのスペックも気になるし、舌は痺れるしで、途中仕込み水休憩を3回挟んでやっと全てをききました。ひとつの蔵のお酒をこれだけの種類きいていると何だか特徴がわかってきた様な気がしてしまいます。「この感じは山田錦じゃないか」「これは山廃ではないよね」「これは亀の尾だ」など一人でぶつぶつ呟くのは怪しいかと思いきや、結構周りの皆さんも同じ感じ。気分は杜氏さんです(あくまでも勝手な気分です)。そしてアンケートで出荷前のものの中から気に入った番号を回答します。ここは思い切って一つに絞って、聞かれていないのに理由も書いてしまいました。そして出荷済も含めてお気に入りのお酒の番号も回答します。そのほかにもいくつか質問に回答したアンケートを提出して終了です(任意記名式でしたので私は記名しました)。
上原酒造は通常数年熟成させるということもあり、醸造年の違うものが色々あるので種類が増えるのかもしれませんが、それにしてもこれだけの種類をひとつひとつ管理していくというのはとても大変な仕事だなぁと痛感しました。

蔵直売所で買って帰ります

出荷済のものの多くは隣の蔵直売所で購入できます。私は、きいて一番気に入った普通酒(と言っても純米です、山廃です、無濾過生です、って何故普通酒??)と、定番の赤ラベル(3年熟成)、そして古酒(18年熟成)の3本を購入して家路につきました。蔵に行くと今まで出会ったことがなかったお酒を買えるのがうれしいですね。これからしばらく1本ずつ時間をあけて楽しませてもらいます。
しかし、またもやバスの時間を間違えてしまい、結局駅まで歩きました。さすがに疲れましたが、新快速にちょうど乗れたので、頑張るといいことがあるなぁと思いながら帰宅しました。
貴重な体験ありがとうございました。