※この記事はsakefan.net掲載記事(2018.01.23)の転載です

大阪駅からJR福知山線で乗り換えなし。福知山駅の二つ前が山名酒造があるJR市島駅。公共交通機関を使う私としては駅から歩いて行ける有難い蔵元。そして丹波杜氏の故郷でもある兵庫県丹波市にあります。
肌寒さを感じる朝の9時半ごろにお伺いしたのですが、蔵人の皆さんはもう休憩中。社長の山名純吾さんと営業でオーガニックコンシェルジュの田中昌道さんからお話を伺いました。

山名酒造 正面

もともとお米の有機栽培が盛んだった丹波地区

蔵がある丹波地区は、もともとお米の有機栽培については日本の中でも先進的な地域でした。今から43年前の1975年には「市島有機農業研究会」が発足。阪神地区などの消費者と連携した産消連携運動を行っています。この形は世界にも先駆けたものだったそうです。詳しくは丹波市有機の里づくり協議会のWebサイトをご覧ください。それでも酒米を作ってもらうには時間がかかったそうです。
今の社長が蔵に戻られたのが漫画「夏子の酒」が流行った時ということなので1990年代前半。妹さんが蔵にいたため「蔵に女性がいる」ということで夏子ブームの流れで蔵へ見学に来る人も結構いたとか。そこで「酒米作りをしよう。どうせなら有機栽培で。」となったが、手を挙げてくれる農家はなく、最初は農地を貸してもらって蔵の人が自分達で酒米作りをしたそうです。自らやったからこそ、その大変さは十分承知されています。現在は、契約している3つの農家が有機栽培や自然農法などで酒米を作ってくれているのですが、その協力に報いるためにも、もっとその日本酒を広めていきたいと仰っていました。現在の販売先の多くは有機野菜など有機食品の販売店や宅配会社。なかなか一般市場ではオーガニックの価値が認められていないと感じているというお話もありました。

原風景が残る蔵元

蔵の規模は500石※ です。今の人員ではこの量が限界ではないかというお話でした。設備は昔ながらのものも多く、手作業が中心。一升瓶の栓どめを1本づつ手作業で行う機械はなかなか風情を感じるシロモノ。
昼の11時になって、更に冷えてきた感じもする蔵は冬場は天然の冷蔵庫であり、冷蔵設備も必要ないのです。日本古来からの酒造りの現場を感じる風景です。最近、冷蔵タンクや冷蔵貯蔵庫を見慣れていたのでそこは新鮮。夏場でも土壁蔵に置けば15度以上になることは稀なので火入れ済のお酒の保管のための冷蔵設備はやはり必要ないとのこと。
現在の杜氏は夏は同じ丹波で酒米を作り、冬は蔵でお酒を醸しています。まさに地元の気候も水も米も知り尽くした丹波杜氏が醸しているわけです。

左上)甑 左下)仕込みタンク 右)手動瓶栓機

蔵の倉庫近く、タンクの建物の奥には瓶詰を待つ瓶たちがズラリ。瓶の検査をする器具も初めて見たタイプ。味があります。一つ一つ丁寧に造られていることが伝わってきます。きっと器具も大事に使っておられることでしょう。もちろん機械化が必要なところはありますし、より多くの方に届けるためにも生産量を増やすことが必要なこともあると思いますが、いいチームでできる量をしっかりと造るという考えかたも良いなぁと感じました。

上)瓶棚 左下)四合瓶検査 右下)一升瓶検査

モットーはチームワーク

山名社長に一番大事にしていることを伺いました。
「やっぱりチームワークが一番。喧嘩して作った酒に美味しいお酒はない。」とのお言葉。なかなかに心に残るお言葉です。言われてみると当たり前のことかもしれませんが、そこを日々大切にして(意識をして)お酒をつくられていることはとても素晴らしいと感じました。
昔ながらのの杜氏制度を守っていると聞くと、何だか厳しく堅いイメージを勝手に持っていましたが、きっと厳しい中に信頼関係と温かさがある環境なのではないでしょうか。若い営業の田中さんに蔵を案内してもらっているとそんな雰囲気を感じました。

デザインもいいんです

また、蔵のパンフレットやラベルなどのデザインはとてもセンスがいいんです! 版画を使ったり、かなり分厚い和紙に墨文字だったり良いと思いませんか。人に贈るにもちょっとイイですよね。パンフレットは毎年デザインを変更されるとのことなので、来年のデザインが今から楽しみになります。ちなみに基本銘柄の「奥丹波」は昔ながらのシブいデザインです。
皆さんも一度、良いチームワークで醸されたお酒を楽しく呑んでみてください。飲む時もチームワーク良く楽しく飲むのが一番です!

いろいろなラベルデザインの瓶たち

春夏秋冬 4種類のパンプレット「蔵元便り」

※ 石:こくと読みます。1石は10斗。1斗は10升。ということで500石は一升瓶50,000本分の量を年間で生産されているということになります。

注)今回は山名酒造さんのWebサイト(http://www.okutamba.co.jp/)のトーンを参考に写真の色を変更してみました(パンフレットは除く)。